この話は、前回の「姉の生理の手当て(タンポン)」

の続きです。

あの時たまたま聞こえた母親の声と姉の悲鳴から、俺は女性が生理ですごく辛い
思いをすることがあることを知った(そりゃあまり辛くない人もいるだろうけどさ)。
それから何年も経った今、そんな話を投稿したのは、正直に言うと

「どーよ、おまえら男どもはみんな知らないだろうけど、女って割と知らないと
ころで苦労してんだぜー。思い出せる限り詳しく書いたから勉強になっただろ?
わかったらどんどん“イイ!!”を押してくれよなー」

くらいの気持ちだった。

こんなことを知っている男性なんてそんなにいないだろうから、きっと新鮮に感

じるだろうと思ったし、この手の話で興奮するヤツもいるだろうと思った。見る
のは男だけだと思った。実際に、評価はイイの方が多いみたいだし、勉強になっ
たって書き込みもあった。

ところがなんか女の人からのコメントもあって、29番の人なんか、「お姉ちゃん
思いだね」なんて書いてくれている。違う。全然違う。その話は、俺のかっこい
いところ、分かったようなところ、綺麗なところしか書いてないものです。本当
は俺はそんなに姉思いでもないし、絶対にいい弟なんかじゃない。

それどころか、その話から一ヶ月も経たないうちに、姉に酷いことをしたんです。
本当にとりかえしがつかないくらい、酷いことをして、でもそんな事は親にも他
人にも、誰にも話せなくてずっと心にしまっていた。それこそ「結果オーライ」
どころの話ではない。全然オーライじゃない。もう小物どころか、人でなしのレ
ベルだ。

前回の話は、姉の生理のことに関する記憶の中から、ほんの僅かな綺麗なところ、
俺がかっこ良く見てもらえるところだけを抽出したものです。

これからの話は、膨大な量の残った絞りかす、俺の九割以上を占める汚い部分です。

どこかに吐き出したくて書いて、でも誰かに伝えたところで、俺の何が変わるわ
けでもないし、そして何より『(・A・)イクナイ』。恐ろしくイクナイ。読ん
で気分が悪くなる人もいるはずです。わずか数時間の間に起こったことだけど、
文章の量も多いです。

—————————-

前回の話から数週間後。

俺の中学は開校記念日で休みで、姉は前日の夜から熱があるということで高校を
休んでいた。両親は共働きで、母親は昨晩の洗濯物を干した後、俺と姉の分の昼
食(ビーフンだった)を作って仕事に行った。

10時ころ、姉は体調が良くなってきたからと、学校に行くといって準備をし始め
た。俺は誰かと遊びに行こうと思って、友達の家に電話をかけた(そのころは携
帯なんて持ってなかったな)。

結局、電話した友達は都合が付かなくて遊びにいけなかったんだけど、電話口で
30分以上も雑談をした。電話が終わって、気づいたら姉はもう学校に行ったみた
いだった。

俺は本屋にでも行こうと思って、自分の部屋から鍵と財布を取ってきて、玄関に
向かった。ところが靴を履こうとして気が付いた。姉の靴がまだあったのだ。

まだ家の中にいるのかと思って、『お姉ちゃーん!』って呼んでみたけど、ぜん
ぜん返事がない。でも靴は通学靴も普段履く靴も両方あったので、外に出て行っ
たとも思えない。

体調が悪そうだったし、もしかして部屋で休んでいるのかと思って姉の部屋を覗
いてみたが、いなかった。ではトイレかと思って、トイレのドアをノックしてみ
たが、やはり返事はない。

ということは、やっぱりもう既に出かけたのか。靴は俺が知らないだけで、きっ
と別のを履いていったに違いない。そう思った。

何だよ、心配して損した…とか考えながら、俺は出かける前にトイレに行った。
そこでやっと気が付いた。遅すぎた。

トイレのドアに鍵がかかっていた。

ドアの鍵は簡素なもので、その気になれば外側から鍵をかけることも、開けるこ
ともできるものだったが、どう考えても、中に人がいないのに外側から鍵だけか
けるなんて、家族どうしではありえない。

ドアを強くノックし、『お姉ちゃん!』と呼んでみたが返事がない。
俺は財布から10円玉を取り出して、ドアノブの鍵の溝に引っ掛けて回した。ドア
を開けると異臭が鼻をついた。

ほとんど水分だけの吐瀉物が、便器の中と、トイレの床にぶちまけられていた。

そして床に広がった吐瀉物に顔をうずめるように、制服のスカートと下着を膝ま
で下ろした姉が倒れていた。

一瞬思考が止まった。…いや、一瞬どころか、もしかしたら数秒間くらい止まっ
ていたかもしれない。

気づいたら俺は姉をトイレの外へ引っ張りだそうとしていた。抱き起こそうとし
たけど、人が二人も入る余裕なんてトイレにはない。動転していた俺は、壁に掛
けてあるラベンダーの匂い袋を引っ掛けて落として、隅っこの汚物入れを蹴飛ば
して倒してしまった。埒があかなくて、結局は入り口に近い足のほうを引っ張っ
て、姉の体を外に引き摺りだした。

廊下に姉の体を横たえて、俺は洗面所のタオルを濡らして、吐瀉物に汚れた姉の
顔と髪を拭いた。「知り合いの女子たちを真ん中で分けたら、可愛い方に入るよ
な」と密かに思っていた姉の顔は、口から右半分にかけて酸っぱい匂いのする吐
瀉物にまみれ、肩にかかるくらいの髪は、ふざけて整髪料をぬたくったようにべ
とべとになっていた。

姉の顔色はまるで漫画かアニメみたいに真っ青だった。口の中も拭こうとして顎
に手をかけたとき、姉が薄目を開けた。

『お姉ちゃん!』と呼んだが反応は無かった。数ミリ開いているかどうかといっ
た瞼から覗く黒目は、どこも見ていなかった。そして僅かに開いた瞼の中から、
黒目がぐるりと消えた。それがいわゆる白目をむいた状態だとは、そのときはわ
からなかった。

俺は「あっかんべー」をさせるみたいに、姉の瞼の下を引っ張った。普通は赤い
色をしているその部分は、ほとんど血の気がなかった。貧血だった。

俺も姉も、そんなに体は丈夫ではない方だった。特に俺の方は、体育の時間はよ
く貧血を起こしていたから、貧血かどうかを、瞼の下を裏返して見るということ
は、本か何かで読んで知っていた。

とりあえず姉をどこかに寝かせなければ、と考えたときになってやっと、姉の股
間から白いものが覗いているのに気がついた。

当時中学三年生の俺は、女性の性器なんて見るのは初めてだった。女性の性器に
は、子宮に向かって膣という穴が開いていることは知っていたが、その穴は肛門
のように、いきなり穴だけあるものだと思っていた。

薄い(比較対象なんて当時は無かったが)陰毛の下にはいった亀裂を見たとき、
これは怪我だ、切り傷か何かだと思った。その亀裂の後ろの方から、綿棒の直径
を10倍にしたようなものが、割れ目を押し拡げるように1センチほど飛び出して、
その先から10センチほどの紐が伸びていた。押し拡げられた割れ目の間から、僅
かに肉の色が見えた。

両耳の後ろがガンガンと鳴り始めた。眉間がムズムズとしてきた。

「見てはいけない」なんて思考はとっくに止まっていた。何秒間かわからないが、
俺は実の姉の性器をじっと凝視していた。

どれほどそのままでいただろうか。実際は10秒も経っていなかっただろう。姉の
性器から覗いているその白い物が、ちょうど数週間ほど前に、俺に隠れるように
風呂場で母親に入れてもらっていた「タンポン」というものだと、やっとわかっ
た。

俺の記憶の限り、大きな声で笑うことも、ふざけて悲鳴をあげることもろくにな
かった大人しい姉が、母親にその生理用品を入れられたときにあげた、

『ひッ…! い、痛い、痛いッ!!』

という悲鳴を思い出した。

たった数週間前に、自分で出来ないから母親に入れてもらって、あんなに悲鳴を
あげて、さらには二度も吐くぐらい苦しかったタンポンを、今日は一人で入れよ
うとしたのか。熱で休もうとしていたのに、授業を受けるだけではなく、水泳部
の練習にも参加する気だったのか。

俺は姉の両腕を自分の肩から前にまわすようにして、姉を背中に担いだ。二階の
自分の部屋に布団をしいて、そこに寝かそうと考えたのだ。

このあたりからの俺のした事は、全てが最悪だった。そして何より、最低だった。

そもそも二階に連れて行くという選択からして間違いだった。
貧血を起こしている状態なのだから、頭の位置が高くなるような担ぎ方なんてす
るべきではなかった。家の中なのだから、その場で寝かせて、座布団か何かで脚
の位置を高くして、それでタオルケットでもかぶせてやればよかったのだ。馬鹿
野郎。

重心の定まらない姉の体を担いで階段を上った。当時、姉は高校一年で、俺は中
学三年だったが、俺の身長は姉より少し大きくなっていた。姉の口から僅かに零
れた胃液が、俺の首筋に落ちて、背中の方に流れていった。上っている間に姉に
何度か呼びかけたが、反応はなかった。膝まで下ろしてあったスカートと下着は、
階段を上っている間に落としてしまっていた。

どうしてこのとき、下をそのままにしていたのか。スカートはともかく、下着だ
けでも穿かせてやれば良かったじゃないか。きっとそのときは、性器からタンポ
ンが飛び出しているのに、その上から下着を穿かせて良いものかどうか迷ったと
思うんだけど、それでも、せめて目隠しのつもりで穿かせてやれば良かった。

家族とはいえ、意識がなかったとはいえ、異性に自分の性器を見られた姉は、も
しそのことを知ったなら、いったいなんて思うだろう。

階段を上り、ドアノブを無理矢理に片肘で回して部屋に入った。俺は面倒くさが
り屋な性格で、いつも起きたらすぐにカーテンを開けるように親に注意されてい
たけど、この日だけはカーテンを閉めっぱなしにしていることが幸いした。

姉を床に降ろそうとし、危なっかしくも背中に担いだ姉の体を前にまわし、両脇
に腕をいれて抱きかかえた。そのまま、部屋の壁に姉の背をもたれ掛けさせるよ
うにして、下に降ろした。
いや、降ろそうとした。俺、この日は本当に姉に酷いことを何回もしたけど、こ
れはその一つだ。

そっと床に降ろすつもりだったが、不安定な体勢のせいか、それとも俺の腕力が
足りなかったせいか、床からあと数センチというところで、姉の体がずり落ちた。

意識が無くても、人の体は痛みに反応する。

姉の尻がぺたんと床についたと思った瞬間、ビクンッと姉の背中が弾んだ。目の
前にいきなり現れたものが、のけぞった姉の喉だと、すぐにはわからなかった。

上半身を少し後ろに反らせたまま、姉は俺の方に倒れ、ずり落ちるように床にう
つ伏せぎみに倒れた。倒れたままもう一度、体がヒクッと痙攣した。いったい何
が起こったのかわからなかった。

倒れた姉の股間から、依然として1センチほど頭を出したままのタンポンを見つけ
たとき、体中から血の気が引いた。当時の俺は、処女膜とかって言葉は知らなか
ったけど、きっとこの白い物が、姉の体の中を傷つけたのだと思った。そしてそ
の原因が俺だということも。

大変な事をしてしまったと思った。どうして俺は、姉の体をまるで座らせるよう
に降ろしたのか。どうしてそのまま床に横たえてやらなかったのか。

 『ごめんっ、お姉ちゃん! …お姉ちゃん、お姉ちゃん?!
  ごめんなさい、ごめんなさい…!』

意識のないままの姉を呼び、謝り続けたけど反応はなかった。そのときの俺は、
早く姉の体から、この生理用品を外さなければと考えた。今思えば、タンポンを
俺が抜きとったところで、どうなるわけでもない(もしかしたら抜いた方が良か
ったのかもしれない。それこそ男の俺には、今だってよく分からない)だろうに。

うつ伏せになった姉の体を仰向けにした。
胃液で上の方が汚れたセーラー服と、真っ白な下腹部があらわになった。そのと
きになってやっと、姉の体が汗でびっしょりと濡れていることに気がついた。

出来るだけ姉の性器に目を向けないようにして太腿の間に手を入れたけど、見も
しない状態では、うまく出来なかった。いや、こんなの、言い訳だ。本当は脚を
拡げようとしたんだけど、いきなりそんな事をするのが怖くて、『見なければ出
来ないじゃないか』という言い訳が欲しかったんだ。

姉の体の右側にかがみこんだまま、姉の右脚をその白い腹に押し付けるように持
ち上げた。さっきと同じ姉の性器を、今度はもっと間近で見た。そして姉の性器
から飛び出している白い物、その先から伸びている紐を手に取った。

パソコンを使っているときに例えるならば、マウスのポインタを1ドットずつ動
かすように、俺は本当にそっと紐を引っ張ったけど、全然動かなかった。当時の
俺が目の前にいたら絶対に頭をはたいていただろう。なに真下に引っ張ってんだ
よ、と。もっと手前の方に引っ張れ、そんなことも知らんのか、この野郎!

でもその頃の俺は、本当にどうしようもないくらい馬鹿で、引っ張っても動かな
いのは、この割れ目が左右からはさみこんでいるせいだと思った。

姉の右脚を押し上げたままの左腕の指を腹側から伸ばし、姉の性器を拡げた。俺
は割れ目がタンポンをきつく挟み込んでいるものと思っていたので、軟らかい質
感に驚いた。

人差し指と親指で割れ目をさらに拡げると、割れ目から見えていた口の中みたい
な肉も、一緒に拡がった。ツーンとする臭いがしたような気がした。

左指で姉の性器を拡げたまま、もう一度タンポンの紐を手に取り引っ張った。だ
けどやっぱり動かなかった。「これって本当に抜けるのかよ」なんて考えながら、
少しずつ力をいれていくと、あるところで急にタンポンが入っているところの周
りの肉が盛り上がりだした。

『ズッ…』って音がしたのかどうかよく分からなかったけど、肉が盛り上がり始
めたと思った瞬間、タンポンは抜けた。血はまったくついていなかった。

怪我をさせてなかったことに安心したとともに、生理の血すら付いていないのが
不思議だったが、まだそのときは理由がわからなかった。

タンポンが入っていた膣口は、僅かに拡がったままだった。俺、本当にそのとき
は最低な気分で、このまま実の姉の性器を拡げていたいと思った。姉の意識が無
くて、全然反応しないこと、きっと心のどこかで安心していた。

でもずっとそのままで居ることなんて出来ないわけで、俺はゆっくりと姉の脚を
元に戻した。姉に服を着せなければいけないし、そもそも床に寝かせたままでも
いられない。

姉の性器からとりだしたタンポンは、そのまま捨てて良いものか分からなかった。
とりあえずティッシュに包んで自分の机の上においておいた。

押入れから布団を出して床にひき、姉の体を横たえた。汚れたセーラー服を脱が
して、汗でグショグショに濡れているその下に着ているものも、ブラジャー以外
は全て脱がせ、掛け布団をかぶせた。

さっき姉が穿いていた下着をとってこようと、一階に下りる途中で制服のスカー
トと下着を見つけた。下着を拾いあげ、二階に戻ろうとしたときに、その下着の
股間の部分に目がいった。

姉が穿いていた下着の股間の部分は、黄色い染みがべっとりと付いていた。そし
て、僅かだが血も付いていた。

その頃の俺は、女の人の下着がオリモノで汚れることを知らなくって、これは汚
れているのではなくて、下着の模様か何かと思った。よく見ようと顔を近づけた
とき、今までに嗅いだことのない臭いがして、その下着が本当に汚れていること
がわかった。もうこの下着は姉に穿かせてはいけないと思った。

母親が出かける前に干した洗濯物の中から、姉の下着を探した。まだ少し生乾き
で、パジャマの方は、ほとんど乾いていなかった。しかたなく、今は下着だけで
も穿かせておくことにした。

部屋にもどって、やはり後ろめたい気分で掛け布団をまくり、姉に下着を穿かせた。
「見ない、見ない」と頭で考えていながら、視線は姉の性器に向いていた。さっ
きは僅かに開いていた姉の性器は、ぴったりと閉じていた。

さっき見た、姉の性器の中の肉の色が見えなくてよかった。あそこが見えていたら、
どうにかなってしまうと思った。

寒くないように布団をかけて、汗や胃液で汚れた服をもって一階に下りた。洗濯
籠の中にもってきた服をいれたが、そのときの俺は、セーラー服はきれいに畳ん
でおかなければいけないと思った。どうせ洗濯するというのに、妙なことを考え
たものだ。

姉が目を覚ましたら、何か食べさせなくてはいけなかったが、母親が用意してい
たビーフンは、少し脂っこくて貧血で倒れた姉の胃にはもたれそうだった。歩い
ていけるところにコンビニがあったので、そこでレトルトのお粥を買ってきた。
姉と同じものを食べなきゃいけないような気がして、二つ買った。

家に戻って、干してあるパジャマが乾いているかどうか確かめたが、やはりまだ
生乾きだった。しかし、ずっと姉を下着のままでいさせることは出来なくて、す
こし湿っているけど、このパジャマを着せることにした。

パジャマの上下を持って、姉のところに戻った。姉の顔色はまだ青白いままで、
何度か名前を呼んで手の平をつねってみたけど、まったく反応がなかった。

掛け布団をめくり、姉にパジャマを着せようとした。見ないつもりが、俺の視線
はまたしても姉の股間を向いていた。そして俺は、姉の下着の股間の部分に、ほ
んの僅かな、ご飯粒ほどのシミを見つけた。血だった。

なんて迂闊なことをしたことか。タンポンを使っていたということは、当然、生
理だったわけで、生理であるかぎり、出血があるのはあたりまえだった。新しい
きれいな下着を穿かせたところで、経血で汚れるのは時間の問題だった。

自分のせいで姉の下着を汚してしまったと後悔したけど、そのときの俺は生理の
手当ての仕方なんて知らなかったし、ましてやタンポンなんて使おうとも思わな
かった。そもそもタンポンが何処にあるのか分からなかった。

俺はとにかく血を拭かなければと思った。いや、本当にそう思ったのか。本当は、
それを言いわけにして、もう一度姉の性器を見たいと思ったのではないか。今考
えると、絶対に善意だけではなかった。

下着を膝まで下ろした。内側の股間の部分には、小さく縦長の血の染みが出来て
いた。俺は台所からウェットティッシュをもってきて、「これは血を拭くんだ、
血を拭くんだ」と情けない言いわけをしながら、姉の性器の閉じた割れ目の上か
らティッシュをあてた。

でも、すでにそのときの俺は、女の人の性器の割れ目を拡げると、その中身があ
ることを知ってしまっていた。俺の弱い心は、その中も拭かなければいけないと
考えた。

これこそ今考えたら滅茶苦茶なことだ。言いわけどころか最低だ。出血は一回だ
けではないのだから、たとえ今、中を拭いたところで、いずれはまた出血するの
だ。それなのに、俺は、本当に姉に酷いことをした。

膝まで下ろした下着を脚から脱がせた。そして、さっきと同じように左手で、姉
の右足を腹につけるように押し上げた。割れ目がぴったりと閉じたままの姉の性
器が上を向いた。

もうこのときの俺は正気ではなかった。

左手の人差し指と親指で、姉の性器を拡げた。『くちっ』っという音がしたよう
な気がした。さっきはツーンとした臭いくらいにしか感じなかったが、今度は自
分から姉の性器の臭いを嗅いだ。本当にこのあたりは書いていても最低な気分に
なる。

小便のような臭いと、魚屋のような生臭い臭い、そしてチーズを腐らせたような
臭いが鼻をついた。姉の体からこんな臭いがするなんて信じられなかった。出血
しているはずなのに、血の匂いはわからなかった。

拡がった中の粘膜に、折りたたんだウェットティッシュをそっとあてた。場所を
代えて、何度も何度も押しあてた。姉の性器を拡げるのに使っている左手の指の
あたりも拭いた。

何度か姉の性器にティッシュを押し当てたあと、雑巾を畳みなおして使うように、
ウェットティッシュを畳みなおそうとした。しかし、右手だけでやろうとしたの
と、指が震えていたせいで、ティッシュを布団の上に落としてしまった。

それで俺は歯止めが効かなくなった。

指を直に姉の性器の中にあてた。力を入れると姉が気づきそうで、そっと触るだ
けだったが、何度も触った。さらにはその指に付いた臭いを嗅いで、なんと下劣
なことか、その指を舐めた。

そのときの俺は、いったいどんな顔をしていたのだろう。俺はさらに指を動かし、
さっきタンポンが入っていた膣の入り口を捜そうとした。しかし入り口は閉じて
いて、その場所すら分からなかった。

でも俺は、タンポンを抜いた場所が、性器の後ろの方にあることを覚えていた。
いくら正気でなかったとはいえ、絶対に許されることではないが、俺は、「それ
なら入り口あたりに指を押しあてて、力を込めれば膣の中に指が入るじゃないか」
と考えた。

そのままの姿勢で、姉の顔をみた。顔色はさっきとあまり変わらず、やはり意識
が戻りそうにはなかった。恐ろしいことに、俺は姉の意識が戻りそうにないこと
に安心していた。これなら、指を根元まで膣に埋めても大丈夫じゃないかと思った。

人差し指を姉の「膣の入り口らしきところ」に押し当て、せーの、と息を吸い込
んだ。まるで悪魔か何かだ。

しかし、いったいどういう理屈だったのか。「せーの」と息を吸い込んだ瞬間、
さっきから漂っていたはずの姉の性器の臭いがした。生臭いような、チーズのよ
うな、酸っぱいような臭いをもう一度嗅いだ瞬間、俺は自分がやっていることに
気が付いた。

いや、とっくに気が付いてはいた。きっと、本当は怖くなったのだ。唾液がつい
た自分の指が、姉の膣口を割り、姉自身の指と、母親の指以外の体の侵入を許し
たことのない膣に潜り込むのが怖くなったのだ。

右手を元に戻し、割れ目を拡げていた左手の指を離して、長いこと押し上げてい
た姉の右脚をもとに戻した。膝立ちになったまま、左手で右手首を握り締めた。

そのまま右手を握りつぶしたくなった。

どれくらいそのままの状態でいたのか。俺は姉の下着を新しいのに代えなければ
いけないと思い、のろのろと立ち上がった。でも新しい下着がどこにあるのかな
んて分からなかったし、もし新しい下着にしたところで、再度出血すれば、また
汚れる。

俺はせめて、姉の下着がこれ以上汚れないように、下着の股の部分にティッシュ
ペーパーを折りたたんで、あてがっておこうと考えた。俺の机のそばに置いてあ
るティッシュの箱から一枚取り出し、股布のサイズに合うように折りたたんだ。

でも、いざそのティッシュで手当てをしようとしたとき、俺が普段使っているテ
ィッシュを使ってはいけないような気がした。もちろん箱から取り出したティッ
シュなので、別に汚れているわけではないが、俺が普段使っているものを姉の性
器に触れさせてはいけないと感じたのだ。

一階に下りて、押入れの中から新品のティッシュの箱を持ってきた。封を開け、
さらに一番上にある一枚目のティッシュは捨てた。

さっきと同じようにティッシュを折りたたんで、姉の性器と下着の股布の間にあ
てようとしたけど、何度も失敗した。7回目くらいで、やっとうまくいったが、い
ま思えば無様な出来だった。

そして俺はやっと、当初の目的であったパジャマを着せた。寝ている姉の服を脱
がすのにも苦労したが、服を着せるのはもっと大変だった。

ずっと裸に近い状態のままで寒かったことだろう。パジャマを着た姉に掛け布団
をかぶせた。もう一度顔色を見ようと思ったが、俺はもう姉の顔を見ることが出
来なかった。

のろのろと部屋を出て、階段を降りる途中で座り込んだ。

どうして俺は自分でこんなことをしてしまったのか。どうして母親を呼ばなかっ
たのか。携帯電話はその頃の母は持っていなかったけど、職場に電話すればすむ
だけのことだった。いや、もし母親に連絡がつかないとしても、お隣のおばさん
を呼んでくればよかったのだ。

もう何をしたらいいか分からなかった。でもやることはまだ残っていた。そのま
まにしているトイレの掃除をしなければいけない。

姉の吐瀉物で汚れていたのは、便器の右と手前の方だけだった。俺はまずは床に
転がったままの汚物入れを元に戻そうとした。外れた蓋を手に取り、倒れた汚物
入れを持ち上げた瞬間、どさどさっと、汚物入れの中身が床に散乱した。

つくづくバカだ、俺は。汚物入れを、上下逆にして持ち上げたのだ。

床に散らばったのは、細長い袋と、プラスティックの筒(その頃はアプリケータ
ーという名前は知らなかった)、そしてさっき俺が姉の性器からとりだしたよう
なタンポンの三つ…いや、正確には、「三種類」だった。やけに数が多かったのだ。

でも血が付いているのは、アプリケーターが一本と、タンポンが一本のたった二
つだった。それも、先端の方に、ほんの少しだけ血がついているだけで、それよ
りも痰のように白っぽい、黄色っぽい汚れのほうが目立つくらいだった。そのほ
かは、注意して見ないと気が付かないくらいの汚れだった。

床があまり汚れなくてよかったと思いながら、散らばったものを拾おうとして、
俺は手を止めた。

そう。汚れているのは二つだけ。床には袋以外に、プラスティックの筒と、タン
ポンが合わせて十数個以上も散らばっている。

どうして他のは、まったくと言っていいほど汚れていない?

床の上には、プラスティックの筒が6つ。タンポンが5つ。袋が6つ。

呆然とその場で姉の汚物を目の前にしたまま、考えた。
30秒ほどだろうか。それとも10分以上経っただろうか。俺は、やっと一つの答え
を思いついた。

おそらく、ここにあるタンポンは、全て「失敗した」ものだ。

俺と違って努力家な姉は、さっき考えたとおり、きっと学校に行った後、部活に
も行くつもりだった。

でも、前回の生理から経過した時間からか、昨晩から自分の体調からか、それと
も女性は生理が始まる前には分かるのか、生理が始まったら、部活に出られない
と考えた。いや、もし部活中に生理が始まったら最悪だ。実際、今朝の時点で姉
が穿いていた下着には、既に僅かながら血が付いていた。

ところがタンポンを入れてくれる母親はもう仕事でいなくなっていた。結局、今
回は自分でやるしかなくなった。

もしかして、姉がこれまでに使ったタンポンは、前回に母親に入れてもらった一
つだけだったのかもしれない。あんなに苦しそうにして、次の日には学校を休ん
だ姉に、あの母親がタンポンを使うことを、なおも強要したとは、とても思えな
い。

とにかく姉は、自分で一本目のタンポンを入れようとしたが、うまく体の中に入
らなかった。もしくは、入ったけど何らかの不都合があったのか。とにかく、挿
入したタンポンを取り出した。結果として、一回目は失敗したのだろう。

いや、そもそも、数週間前に、母親に全部やってもらったときだって、あんなに
痛がって、しかもたった数分で吐き出して、母親に抜いてくれと頼んでいた。抜
くときだって、痛い、痛いという悲鳴が聞こえてきた。それならば、どんなに上
手に出来たところで、それは「成功」にはならず、全てが「失敗」になるのでは
ないのか。

二本目もきっと「失敗」した。それ以降の、残りのタンポンとアプリケーターが
ほとんど汚れていなかったのは、一本目を使った直後だったからだと思う。

前回の話のコメントにも、出血が少ないと入れるのが痛いと書いてくれた人がい
たし、俺も今では、濡れていない膣内に異物を入れることが、処女ではない女性
にとってでも苦痛になることは知っている。

ましてや、まだ高校一年生で、性体験もなくて、しかも女性の体のことを知って
いる母親の指が入ったときにすら(あの優しい母親のことだから、出来るだけ痛
くないように、そっと指を入れたことだろう)、『ひッ…!』と引き攣ったよう
な悲鳴をあげていた姉のことだ。

もう既に(もしくは始めから)、まったくと言っていいほど濡れていない膣内に、
あの乾燥した異物を自分の手で押し込む時の苦痛は、いったいどれほどのものだ
っただろう。アプリケーターの先端が、体の中で拡がる時は痛くないのか。もし
かしてタンポンの先端が一番奥まで届いているのに、無理矢理に押し込もうとし
たのではないか。いや、入れるときだけではない。抜き取るときは?

子宮に近い膣の奥の方よりも、はるかに敏感(らしい)な膣口に近い部分。そん
なところを、カラカラに乾いたタンポンがこすっていくのは、どれほど苦しいの
か。ちゃんと抵抗の少ない前の方に引っ張ったのか。ガチガチに緊張して、体中
に力が入っていたのではないのだろうか。

当時はそんなことまでは、当然考えもしなかった。しかし、数週間前に、姉が風
呂場で母親にタンポンを入れてもらっているときに聞こえてきた悲鳴を思い出し
ていた。

そして何より、さっき、姉の性器から抜けかけのタンポンを取り出したときの抵
抗感を思い出していた。引き抜くときに盛り上がった膣口を思い出していた。
あれは、意識があったら、凄く痛いのではなかったのだろうか。

それほど苦しいことを姉は、三本目、四本目、五本目のタンポンを入れるときも
続けた。そしてそれらを取り出すときも、同じ苦痛を繰り返したのだ。

そして、六本目のタンポンを入れて、それもきっと苦しくて、「失敗した、もう
一度…」と、取り出そうとしたときに限界がきた。

乾燥したタンポンが、濡れていない膣の中を動くときの異物感からか。膣口を内
側から押し拡げた時の痛みのせいか。どんな体勢で生理用品を入れようとしてい
たのかは、わからなかったが、タンポンの後部が紐に引っ張られて、僅かに膣口
から出たとき、貧血と、胃からこみ上げるものは、我慢できなくなっていた。

後はこれまでに書いたとおりだ。
全て、俺が電話で友達と馬鹿みたいにしゃべっていた間のことだった。

俺がそんな姉にしたことは。

トイレから引き摺りだしたあと、きっと母親以外の人間には見せたことすら無い
性器を、じっと見た。

貧血で苦しいはずなのに、二階の部屋まで連れて行った。

部屋の壁にもたれかけさせようとして、本当に酷いことをした。出血はしなかっ
たけど、あのタンポンの先端が、きっと姉の膣内を強く抉ったはずだ。絶対にも
のすごく痛かったにきまってる。

その後、勝手にそのタンポンを抜き取った。弟である俺の指が、意識のない実の
姉の性器を押し拡げた。

そして、そして最後には、押し拡げた性器の中をウェットティッシュで拭いた。
臭いも嗅いだ。指で直に粘膜を触った。その指を舐めた。

それだけではない。あれほど痛かったであろう膣内に、膣口に、俺は唾液が付い
たままの指を押し込もうとした。姉に意識が無いことを安心していた。

もう俺は耐えられなくなった。

まだ姉の吐瀉物が残っている便器の中に吐いた。頭のなかでものを考えるだけで、
これほど苦しくなることなんてなかった。でも、そんな俺よりも、姉の方がずっ
と苦しい思いをした。本人の意識はなかったけど、実の弟の俺が酷いことをした。

女のひとの性器というものは、「美しいもの」ではないのかもしれない。「美し
いもの」ではないのかもしれないけど、きっと体の中で一番弱いところで、守ら
なければいけない処だと思った。俺みたいなのが勝手に拡げて、中を見ていいも
のじゃないし、指で触ったり、その指を膣の中に押し込もうとするなんて、あっ
てはならないことだ。

もしかしたら、人殺しをしたときもこんな気分になるのかと思った。

ひとしきり吐いたあと、水を流し、俺は床に散らばったままのタンポンとアプリ
ケーター、そして袋を汚物入れの中に入れた。指で直に触ったけど、汚いとは思
わなかった。そして姉をトイレから出すときに落としてしまったラベンダーの匂
い袋を壁に掛けなおした。

その匂い袋は姉が、『トイレに何か飾ろうと思って』と、どこかで買ってきたも
のだった。それを思い出したとき、目から涙がこぼれた。

トイレの床を雑巾で拭き終わって、もう何も落ちていないか確かめたとき、大変
なことを思い出した。

姉の性器から俺が勝手に取り出した6つめのタンポンは、ティッシュペーパーに包
んではいるものの、まだ姉を寝かせている俺の部屋の机の上に置いてある…!

まだ寝ているであろう姉を起こさないように、忍び足で二階に上がった俺が、開
きっぱなしのドアから見たものは、布団の上で膝立ちになり、パジャマを膝まで
下ろして、下着を太腿まで下げ、俺が挟み込んだティッシュペーパーを見ている
姉の姿だった。

両方の手の平を重ねて、下腹部を押さえていた。

完全に思考が止まった。そして顔を上げた姉と目が合った。

一瞬、俺と姉は互いを呆然と見ていた。そして姉が慌てて掛け布団で下半身を隠
したとき、俺はやっと我にかえった。

『あ、あ、あの、ぼ、僕、』
…なにやってんだよ、当時の俺。

『その、お、お姉ちゃんが、と、トイレで、た、たお、倒れていたから、』
…だから?

『その、ぼ、僕、か、勝手に、その、ち、ち、血とか、でてたから、』
…早く謝れよ、俺。

『だ、だから、その、あ、あ、あの、ぼ、僕…』
…最初に戻ってんじゃねぇよ。

もう何を言っていいかわからなった。姉の顔を見ることができなかった。
そんな情けない俺に、姉が言った。

『…なんだか、ごめんね』

姉は、困ったような、苦笑しているような顔をしていた。
その顔を見たとき、さっきとは比べ物にならないほど、俺の目から涙があふれた。

『…ごめんなさい、お姉ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい…!!』

もうね、バカかアホかってくらいに泣いた。中学三年にもなって、ボロボロと泣
いた。あはは、本当に情けないね。そして姉の次の言葉を聞いて、さらに泣いた。

『泣かないの。大丈夫だから』

大丈夫じゃないだろ。全然大丈夫じゃないだろ。倒れるほど苦しかったんだろ。
その後、俺はあなたに、本当に酷い事をしたのに。もっと他に言うことがあるだ
ろ。ほら、「出ていって!!」とか、それか口もきかないとか。でも俺は何も言
えなくて、ただただ泣いた。ひたすら目から零れる涙を、袖で拭った。

『ちょっと。ねぇ、こっち来なさい』

俺は泣きながら姉の側に行った。もう小学生か幼稚園児みたいだった。どれくら
い泣いていたか覚えていないけど、姉は俺が泣き終わるまで待っていた。
泣いて泣いて、少し落ち着いた俺は姉に、『痛くない?』と訊いた。

『痛くないよ。ごめんね、ありがと』

なに言ってんだよ、「ありがと」じゃないだろ。全然ありがたくないだろ。それ
に痛くないってなんだよ。さっき腹を両手で押さえていたのは、いったいなんな
んだよ。もうね、バカかと、アホかと、俺。ほんとうになんなんだよ。

『ちょっとまっててね。口のなか濯いで、髪を洗ってくるから』

一階まで背負っていくと言ったけど、姉は大丈夫だといった。俺はせめて肩を貸
すと言った。何かしなければ気がすまなかった。階段に腰を掛けて、姉が出てく
るのを待ち、二階に上がるときも肩を貸した。

トイレの中を見たのか、『ごめんね、トイレ、汚かったでしょ?』と言った。俺
はなんて答えていいか分からなくて、『全然汚くなかった』と答えたら、姉はさ
っきみたいに苦笑して、『ぜんぶ片付けさせちゃったね』といった。

「ぜんぶ」というのが、どの「ぜんぶ」なのか分からなかったけど、何も訊けな
かった。姉も何も言わなかった。布団に姉を寝かせて、コンビニでお粥を買って
きたことを伝えると、食べるといった。

姉の分と自分の分のお粥を電子レンジで温めて、二階に持っていって二人で食べ
た。姉が、『どうして■■(俺の名前)もお粥なの?』って訊いたんで、『いや、
なんとなく』と言った。姉は笑ったけど、俺の方はとても笑って良いような気分
ではなかった。

食事が終わった後、姉は『夕方になったら起こして』、と言い、布団に横になっ
た。6時になったら起こしに行こうと思ったが、4時頃に自分で起きてきた。普段
着に着替えていた。

『ごめん、自分の布団で寝てればよかった』と姉は言ったが、当然、責める気に
はならなかった。それどころか、こんなことで済むのなら、俺は一生自分の布団
で寝られなくても良いと思った。

母親が帰ってきた後、何か二人で話していたけど、もう前のように盗み聞きをし
ようなんて、考えすらしなかった。

寝る前に、机の上に置きっぱなしにしていたものを見つけた。すっかり忘れていた。
俺はそれを、そっと部屋のゴミ箱に捨てた。

布団に入ると、姉の匂いがした。もう一つの姉の臭いを思い出しそうになって、
その思い出してはいけないことを、必死で思い出さないようにしていた。

そんなことをしているうちに、俺はいつの間にか眠ってしまった。

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