中学のころ、同じクラスにものすごくキレイなコがいた。
仮にMちゃんとしようか。
ちょっと背が高めで、透き通るような肌に、少々茶色気味の髪。
目の色も薄かったので、脱色しているのではなく、元々
色素が薄いのだろう。

Mちゃんはとても明朗なコだった。でも二年の後半くらいから、
ちょっとだけヤンキーグループに入っていたかも。俺も相当
やかましい少年だったが、ヤンキーとは無縁。よって、
俺のほうからMちゃんに話し掛けることはほとんどなかった。
俺は元々、友達を選ぶヤツだったから・・・。

二年の三学期、席替えでMちゃんの前の席になった。俺は家では
まるっきり勉強しないし、ノートもとらない。そのかわり、
先生の話だけは絶対に聞き逃さないようにしていた。

なので、後ろからMちゃんが話し掛けてきたりするのが
すごくうざったく感じていたが、席替えからひと月もすると、
最初は自分からは話し掛けなかった俺も、休み時間などには
Mちゃんと雑談するようになっていた。
あるとき、Mちゃんが、「まつ毛ついてるよ」と俺の頬に
手を伸ばしてきた。瞬間、どきっとした。Mちゃんはものすごく
キレイな手をしていたからだ。当時、俺は14才の少年らしく、
ものすごいニキビ顔だった。そんな顔を、Mちゃんに触られるのが
すごくイヤで、とっさに「いいよ」と彼女の手を払い除けて
しまった。

「ゴ、ゴメン・・・」とMちゃんは謝った。それ以来、俺と
Mちゃんは「たったそれだけのこと」で気まずくなってしまい、
休み時間の雑談もしなくなってしまった。友人は「バカだな、
あんな美人なのにお前はなんでチャンス自分から潰してんだよ。
あいつ、ああ見えて処女だぜ」と言ったが、俺は「カンケー
ねぇよ。あんなヤンキーに興味ないし」と強がって見せた。
ただ、心の中ではどうしてMちゃんみたいなキレイなコが俺に
優しくしてくれるんだろう・・・と思ってはいた。
Mちゃんの俺に対する態度や話し方は、ヤンキーグループの
中にいるときのそれとは全然別モノで、すごく女の子らしい
ものだったからだ。

俺はMちゃんの事を、心の中でムリヤリ消し去ろうとしていた。
その時点で、自分がMちゃんに惹かれていることは明白だったし、
実際、気が付くと彼女のことを考えているようになっていたが、
「Mちゃんは、俺とは別の世界にいるコなんだ」と思い込むように
していた。ヤンキーグループの中で、控えめながら乱暴な言葉で
喋っている彼女を見ると、悲しいような、これで諦めがついた
ような、複雑な気持ちだったが、三学期が終わる日、後輩の
女のコからラブレターをもらってからは、Mちゃんのことも
次第に考えないようになっていた。

後輩のコ(Sちゃん)は、幼稚園のころから一緒に遊んで
いたコだった。俺はそのコを妹みたいにしか捉えていなかった
ので、ラブレターなんてもらっても、どこかピンとこなかった。
俺が、どう返事を書いたものか迷い、春休みも半分を過ぎたころ、
Sちゃんが返事を待ちきれず俺の家にやってきた。階下の玄関から、
「あら! Sちゃん久しぶり! ○○ちゃんお部屋にいるから、
勝手に上がってって。おばさん、これから買い物に出かける
トコなの。お構いできなくてごめんなさいね」という声が
聞こえてきた。俺は慌てた。何と返事して良いかわからないのに!

Sちゃんを部屋に招きいれた。しかしあまりに突然だったため、
咄嗟に片づけたつもりではあったが、雑誌(すっぴん)が
数冊、ベッドの下からはみ出していた。
「あの、私ね、○○ちゃんが好きだったの。ずっと。
でも、それに気付いたのは最近。K美(Sちゃんの友人)に
彼氏ができて、ひとりぼっちになったら、私は○○ちゃんが
好きだって気付いたの」
一生懸命に自分を奮い立たせてしゃべっているのがわかった。
俺は「ごめんな、俺はずっとお前のことを妹みたいにしか
考えてなかったよ。しかも中学入ってからはあんまり
会うこともなかったし、突然そう言われても、今の俺は
気持ちに応えてあげられないよ」と返事した。
するとSちゃんは「妹なんかじゃないよ・・・。私は
○○ちゃんをお兄ちゃんだなんて思ってない! 私は
女よ! 小学校の頃とは違うんだから!」と言って、
突然服を脱ぎ出した。

「やめなよ!」と俺が言うまでには少し時間がかかった。
目の前で起っていることが、なかなか認識できなかったの
だと思う。
俺は彼女の手を抑えたが、彼女は「○○ちゃんだって、
こんなの見てるくせにカッコつけないでよ!」と言って
ベッドの下から顔を出している「すっぴん」を俺に
投げつけた。あられもない恰好をした女の子のグラビアが
俺達の前に散らばった。
俺は、何も反論できなかった。Sちゃんは「お願いだから
見て! 見てから決めて! 見もしないうちに私を切り捨て
ないで!」と言って全裸になり、ベッドに横たわった。
目は天井を見据えて涙が零れており、口元は固く結んでいた。
俺は真っ白になった。もう戻れないと思った。

Sちゃんの体は、俺が知っているものではなかった。
中一のとき、小六だったSちゃんと一緒にお風呂に
入ったことはあったが、そのときのSちゃんのカラダとは
全然別物だった。春先でまだ厚着だったため、服を着て
いたときは全然気付かなかったが、Sちゃんの胸は
同級生の誰よりも大きく見えた。乳輪もシワ一つない
美しさで、乳首の先端は若干赤味がかっていた。
俺はSちゃんの両膝を割って入った。目の前に初めて見る
女性器があった。当然まだ処女で、毛も生え揃って
いないように見えた。見事なバストと不釣り合いな
若い女性器だった。俺は本能的にそこに舌を這わせた。

「あっ!」と言ってSちゃんはのけぞった。少しだけ
舌を割れ目に挿れてみた。すると、「う・・・うう・・・」
というSちゃんの泣き声が聞こえてきた。俺は我に
返った。Sちゃんは、すごく無理しているのだ。
子供扱いされた俺に対し、一生懸命背伸びをして
大人の女になったことをアピールしているのだ。
一方、俺はどうか。彼女を子供扱いできるほどの
大人ではない。Sちゃんの気持ちに応えることができない
としながらも、こうして性の衝動に駆られ、本能の赴く
ままに彼女を弄んでいる。こんなことで、良いのだろうか。

「やっぱり・・・よくないよ、こういうの・・・」

我に返った俺は、自分のしている愚かな行動に嫌悪した。
Sちゃんを弄んではいけない。この子はいつも一緒にいた
K美ちゃんと会えなくなって、寂しさのあまり俺に惚れて
いる気がしているんだ。きっと、恋に恋していると
いうのは、こういうことなんだ・・・。

俺はSちゃんを抱きしめた。思い切り。

「お前の事、好きだよ。昔から好きだった。でも、それは
やっぱり女としてじゃない。昔からの、大事な友達として
好きなんだ。男も女もない、そういうのを超えた存在として
好きなんだ。ここで男と女の関係になったら、俺達は
大事なものを失ってしまうかもしれない。だから、ね、
わかってくれ。お前が言うとおり、俺は見たよ。大人に
なったお前を見たよ。お前のカラダは、俺をワケわかんなく
してしまうくらい魅力的だよ。でもそれを武器にしないで。
俺は、お前の武器に勝てる自信ないよ。自分を抑えられる
自信はないよ。これは、お前を切り捨てるんじゃない。
お前を、いつまでの俺の大事なお前でいさせるために、
自分の男の部分を殺しているんだよ」

「うそ・・・。私のカラダなんて○○ちゃんには魅力的に
映ってない。だって、途中でやめたじゃん!」

「何言ってんだよ。俺、夢中になっちゃったよ。
どうしようもないくらい、夢中になっちゃった。ホントだよ。
証拠に、きっと俺は今日から暫く、お前をオカズにして
しまうよ。そんなの自分でもイヤだけど、もうどうしようも
ないんだ。これが男なんだ! いやらしい生き物なんだよ!」

「口では・・・何とでも言えるよね。○○ちゃんは、
私に同情してアソコ舐めたんだよ。決まってるよ。わたし
もう中二になるんだよ。あんなに大人しいK美にだって
彼氏できた。でもあたしには・・・。これって、あたしには
魅力ないってことだよ! カラダまで晒したのに、オンナの
奥の手を使ったのに、私の気持ちは○○ちゃんに通じないんだ!」

Sちゃんがヤケになっているのはわかったが、どうにも
説得できない雰囲気があった。でもここで最後までやって
しまったら、俺は最低なヤツになってしまう。それだけは
避けたかった。普段、頭の中はセックスのことでいっぱいの
くせに、こんなチャンスを前にしていながら自分を抑えな
ければならない。それはとてもツラい事だった。最悪の
事態を避けつつ、ここでちゃんとわかってもらうためには、
すごく情けない行為に思えたが、もう、そうするしか
なかった。

「お前も、俺を見ろ」

俺はズボンとパンツを脱いだ。いきり立ったペニスは
先端が濡れて光っていた。

「な、見てみろ。これが証拠だ。お前のカラダは俺を
こんなにしているんだ。辛いのは、お前だけじゃない。
腹をすかした状態でご馳走を目の前にしているのと
同じなんだよ。わかるか? 俺はいますぐにでも、
いつもしているように自分で・・・わかるよな?
ものすごく情けない姿だけど、お前の目の前でオナニー
してしまいたいくらいだよ。わかってくれ。俺は
いま一生懸命自分を抑えているんだ。俺を、これ以上
困らせないで・・・」

彼女は、恐らく産まれて初めて見るだろう勃起したペニスを
見て、息を飲んでいた。そして・・・。

「ごめんね・・・○○ちゃん・・・。辛いんだ、
そうだよね。ワガママ言ってごめん。私、明日から
前の私に戻るよ。○○ちゃんが妹だって言うなら、
妹に戻る。だから、今日だけは、恋人だって思わせて。
○○ちゃんが情けないって思うなら、一人でなんか
させないよ。ね? 私も、こんなだから・・・」

そういうと彼女は、俺の右手を股間に導いた。知識では
知っていたが、「濡れる」という現象を目の当たりにして、
俺は不思議な感動を覚えた。
不思議と、落ち着いた口調で言われると、俺も無理に
自分を抑えようという気持ちは消えていった。
今日だけ、恋人になればいい。二人のためだ。俺もこいつも
お互い求めているんだ。でも最後までしない。それだけは心に決めて。

彼女の股間に滑り込んだ右手の指先を動かすと、

「や、やぁん! だめ、いま、サイコーに敏感だから!
もっと、もっとゆっくり、ね・・・?」

どちらからともなくベッドに横たわり、シックスナインの
姿勢になった。俺は、自分でも不思議なくらいに穏やかな
気持ちで、彼女の秘部に再び舌を這わせた。

「ん・・んくっ・・・あん・・・んんっ・・・
あ・・・あ・あ・・ああ・・・すごい・・・
すごいよ、すごいの・・・こんな・・・ああっ」

なんとかわいい声だろう・・・。

「はぁ・・・はぁ・・・やだぁ・・・ごめん・・・
やらしいオンナって思わないで・・・。私も・・・私も
いつも○○ちゃんのこと考えて一人でしてた・・・。
お願い、私のこと軽蔑しないでね」

そう言って彼女が俺の熱くなったペニスを口に含んだ。
オナニーしか知らなかった俺にとって、未知なる快感が
下半身から背中にかけて、電気のように走った。

「・・・んん・・・んっ・・・」

声にならないような声を出しながら、彼女は俺の熱い
精液を飲み干した。

「へへ・・・飲んじゃった。○○ちゃんの・・・」
「き・・・気持ちわるくない?」
「なんか、のどにひっかかるけど、でも大丈夫。
ごめん、ちょっとヘンな味なんだね」
「俺こそごめんな、あんなにすぐに出るとは思わなくて・・・。
俺だけ一人でイッちゃって、お前、イケなかっただろ?」
「ん・・・イクって、よくわかんないし(笑)」

そんな話をしながら暫く抱き合っていたが、母が車庫に
クルマを入れる音が聞こえたので、慌てて服を着た。
していたことがバレるのではないかとヒヤヒヤしたが、
母は「なによ○○ちゃん。お菓子も出さないでダメな子ね。
ごめんねSちゃん。よかったら、晩ご飯食べてかない?
お母さんには、わたしから電話してあげるから」と、全く
気付いていない様子だった。
Sちゃんは「あ、今日は・・・結構です。また、そのうち
遊びに来ますから」と笑顔で答えてた。そのとき、
「オンナってすげぇな」と、俺は女の怖さを垣間見た
気がした。

「また、そのうち遊びに来ますから」と言ったSちゃんだったが、
もう二度と来ないだろうと言うことは、その時点で俺も何となく
感じていた。すっかり日も暮れていたので、Sちゃんを家まで
送ることにした。と言っても、歩いて10分足らずの距離なのだが。
並んで歩きながら、Sちゃんが口を開いた。

「○○ちゃん、好きな人いるよね」
「え?」
「M先輩」
「いや・・・別に好きというわけじゃ・・・」
「ダメだよ。わかってるんだから」
「俺、誰にもそんなこと言ってないよ」
「でも、有名だよ。○○ちゃんが言ってなくたって、
M先輩が言ってたらみんな知ってても当然だし」
「え! あいつそんなコト言ってんの?」
「・・・それはわかんない。でも○○ちゃんが言ってないなら、
M先輩が言ったってことでしょ?」

俺は愕然とした。確かに、気になる存在だったことは自分でも
認めざるを得ない。でも、それはあっちが思わせぶりな行動を
しているからなんだ。それを、俺がMちゃんのことを好きだ
なんて・・・。俺は翌日、友達に電話してMちゃんのことを
聞いた。すると友達は「あれ? じゃお前が告ったんじゃ
ないの? なんだよ、俺M狙ってたから告ったんだけど、
お前に告られて付き合おうと思ってるって彼女言ってたから
諦めたんだぜ?」などと言う始末。俺は無性に腹が立った。
今にして思えば、彼女は俺の事を好きでいてくれて、でも
ちょっとツッパったところがあるから自分から好きになった
なんて言えなくて、それで思わず出任せを言ってしまった
だけだろうに、当時の俺はそれを許せるだけの器がなかった。

三年の一学期。俺はMちゃんに文句を言ってやろうと思ってた。
でもまるで痴話げんかみたいでみっともないと思ったので、
俺のヒミツの場所に呼びだして、そこで話そうと思っていた。
俺はMちゃんに呼び出しの手紙を書いて渡した。
ところが、Mちゃんは約束の時間になってもその場所に
来なかった。

俺は、もうなんかバカバカしくなって、全てを忘れてしまう
ことにした。

夏が過ぎ、秋が来て、寒い冬がやってきた。Mちゃんへの
腹立たしさなどすっかりなくなっていた。もう半年以上も
会話もしていない。Mちゃんはヤンキーグループにどんどん
感化されて、次第に髪の毛や服装も派手になっていった。
そんな姿を見るほどに、自分とは全く別世界の人間だと、
心底思えるようになっていた。俺にとって、Mちゃんは
既に「いてもいなくても影響のない」人間になっていた。

ところが・・・。何があったのかわからないが、いつも
ヤンキーグループの中にいたMちゃんが、ある日を境に
一人ポツンとしているようになった。休み時間でも、誰と
話をするわけでもなく、ただ一人で大人しくしていた。
服装や髪形も、かつての派手なMちゃんから、以前の清楚な
雰囲気に戻っていった。
思い過ごしかもしれないが、俺の周りにわざとらしく
近づいていているようにも感じた。下校のとき、俺が
げた箱から靴を出していると、ちょうど彼女も同じ時間に
げた箱の前でハチ合わせすることが、異様に多いような
気がしてならなかったし、俺の自転車のすぐ隣には、
なぜかいつも彼女の自転車が停まっていた。

俺は「一体何があったんだろう」と再び彼女が気になり
はじめた。でも、かつて一度「別世界の人間」として
認識した彼女に再び接触することは、この大事な受験の
時期にまずい影響を与えると思って、結局、卒業まで
口をきくことはなかった。
Mちゃんは俺と同じ高校の別学科を受けていたが、結局
合格できなかったらしく、高校で彼女の姿を見かける
ことはなかった。

そして、三年が過ぎた・・・。

俺は地元の大学へ進んだ。免許も取って、安い中古のクルマを買った。
そのころになると、もうかつての友人達は就職や進学で地元には
殆ど残っていなかったし、大学で知りあった新しい友人は、なぜか
みんな遠くから通っている者ばかりだった。俺は、ひとりぼっちだった。
大学は面白い。クルマに乗っている時も楽しい。たまに土曜日に
サークル仲間で集まって、カラオケで朝までバカ騒ぎするのも
良いストレス発散になった。・・・でも、何かが足りない。
ここ数年、自分の中で忘れてしまっているモノの正体は、一体何だろう。

その正体が解るのには、しばらく時間がかかったが、ある冬の寒い夜、
合コンの帰り道に夜空を見上げてハッとした。

「そうだ・・・。星空だ・・・」

俺にはかつて、ヒミツの場所があった。その昔、話をつけようと
Mちゃんを呼び出した、あの場所だ。その場所は小高い丘の上の
茂みの中にぽっかりと開いた空間だった。あたりは樹木がたくさん
生えていたが、その場所に行くとうまい具合に視界が開け、
見事な星空が見える場所だった。俺は、子供のころからその場所で
星空を見上げるのが大好きだった。

ところが高校受験のために柄にもなく夜自宅で勉強するように
なってから、もう三年以上も来ていなかった。昔は、自転車を
押して息を切らせながらたどりついたその場所に、俺はクルマを
使ってカンタンに来れるようになっていた。だが、クルマの中から
見上げた星空は、以前のような感動を与えてはくれなかった。
自転車を押して、苦労してやっと見ることができた星空と、
今日みたいに苦労もなく来れてしまった星空が、同じ感動を
与えてくれるわけがない。苦労の末に見るからこそ、星空は
輝いて見えるんだ・・・。
そんなことを考えていると、なぜか涙がたくさん溢れてきた。
でも、その涙がすさんでしまった自分の心の汚れを洗い流して
くれるような気がして、俺は毎週のようにその場所に通い詰めた。

ある暖かい、4月の土曜日。俺はいつものように、あの場所へ
向かった。もう寒くもないし、たまには昔のように・・・と、
珍しく自転車を押していった。すると、その日は先客がいた。
その人はクルマを止めてその脇に立って星空を見ていた。
俺以外の人がこの場所にいるのを、俺は初めて見た。
「やっぱ、ここが穴場なのを知ってる人っているんだな」
などと考えながら自転車のスタンドを立てると、その音に
気づいてその先客が振り返った。俺は、その顔に見覚えがあった。
背中に鳥肌が立っていくのを感じた。その人物は、まぎれもなく
Mちゃんだった。

Mちゃんは、俺を見るなり泣き出した。俺は、泣いている
Mちゃんに「やぁ、久しぶりだね」と間抜けな言葉を口にしていた。
正直なところ「もう少し気の利いた言葉は言えんのか」と
自分に腹が立った。
彼女は「ここに来れば、会えると思って・・・」と語った。
俺達は、Mちゃんのクルマに乗って星空を見ながら語り合った。
かつて、俺が呼び出したとき、Mちゃんはこの場所に来ようと
思ったそうだ。だが、俺の書き方が悪くてこの場所まで
たどり着けなかったという。確かに、この場所は危険だからと
閉鎖されてしまった旧展望台の駐車場だ。普通に道を上って
くれば、自然と新しい展望台に出るような道になっている。
ほとんど獣道かと思うほど草が茂っているこの場所にすんなり
たどり着くのは、彼女には無理だったかもしれない。

彼女の言葉で初めて気づいたのだが、その日は4年前に俺が
この場所に彼女を呼びだした日だった。彼女はそれ以降、
毎年この日にこの場所に来ていたという。はじめはわからな
かったこの場所への道を教えてくれたのは、何とSちゃんだった。
Mちゃんは高校受験に失敗し、一年浪人。そして翌年入学した
女子高で、Sちゃんと同じクラスになったそうだ。
Sちゃんに「○○ちゃんとうまくやってます?」と聞かれ、
これまでのいきさつを話したところ、「○○ちゃんはあの
場所大好きだから、いつかきっとそこで会えますよ」と
言ってくれたらしい。

Mちゃんは、かつてツッパっていたときに、素直に
なれなかったことを何度も謝っていた。ホントに好きだったのに、
そう言えなかったと。その言葉を聞いたとき
「俺も・・・同じだったのかもな・・・」と感じた。
彼女が気になっているのに、自分で自分の気持ちも
把握できず、行動も起こせず・・・。そのくせ、彼女が
何とか苦しみもがいてやっと起こした行動に腹立ち、
彼女をこの場所に呼びだして文句を言うつもりでいたのだ。
何と度量のない男だったのだろう。

俺は、彼女がいとおしくてたまらなかった。
思わず、彼女を抱き寄せてキスをした。
そしてそれだけで止まることはできず、彼女の唇を割って
下を潜り込ませた。彼女は息を荒げた。

その後は、ご想像の通り。彼女を助手席の俺の上に移動させ、
シャツのボタンとブラのホックを外した。彼女はかつて
とてもスレンダーで、胸も申し訳程度にあるのみだったのが、
スレンダーなボディは変わらず、胸だけがしっかりと成長
していた。4年も経てば、当然のことではあるが。
俺に覆いかぶさる格好のMちゃんの胸はぶら下がる格好に
なっても形の崩れない、とても美しいものだった。

俺は夢中でMちゃんの胸に吸い付いた。Mちゃんは悦びの
声を漏らした。乳首を唇と舌で転がし、歯で軽く噛むたびに、
「んあ・・・! いい! きもち・・・いい!」と
Mちゃんは声を上げた。俺はガマンできず、Mちゃんの
ジーパンとショーツを一気に脱がした。Mちゃんのそこは
ヘアが光って見えるほど濡れており、俺は指の腹を当てて
クリトリスと転がした。
「やん! あっ! そこ! いいの! あん!!」
Mちゃんの声はまるで別人のように高くなっていった。

俺はいったんMちゃんに腰を浮かしてもらい、ズボンと
パンツを脱いだ。俺のペニスは既に最高潮にいきり立っていた。
俺は一瞬、躊躇した。まさかこんな形で再会するとは
思っていなかったので、ゴムを用意していなかったからだ。
Mちゃんはそんな俺の様子を見て、「大丈夫。安全日だから
このまま、ね? おねがい。このまま生でして。中で出して。
ゴムなんかで遮られたくないの。あなたと一つになりたいの」
そういって、そのまま腰を下ろしてきた。俺は、Mちゃんの
温かいヒダを感じながら、彼女の中に挿入した。

「ん・・・んあ・・・い・・・いたた・・・あ・・・いたい・・・」
彼女は少し痛がっているようだった。俺が「だ、大丈夫?
俺、実は初めてだから、ヘタかもしれない」と正直に言った。
すると彼女も「だ・・・大丈夫・・・。私もはじめて・・・
だから・・・」と言って、俺にしがみついてきた。
俺はゆっくりと腰を動かした。彼女は「あ・・・なんか・・・
大丈夫になってきた・・・」そう言って、自分で腰を動かし始めた。

「あ・・! なんかヘン・・・。こんな感じ、初めてだよ・・・!
いい・・・すごくいいの! ○○くんの、すごい! わたし・・・
わた・・・あ・・ん・・・あ・・もう、あ、もうわたし・・!」

俺は夢中になって腰を動かした。クルマが揺れているのが、
自分たちでもわかった。

「あっ あっ ああっ あん! だめ! わたし、もう、もう
いきそう・・・いっちゃう! いっちゃうよ! い・・・
いっちゃ・・・い・・・っちゃ・・・・!!!!!!!」

「俺も・・・俺も・・・出・・・!!!」

ペニスがびゅくびゅくうねって、彼女の中に大量の精液を
放出した。温かくまとわりつく彼女の粘膜を感じながら精を
放つ快感を、俺は体一杯で感じていた。

この日以来、俺達はちょくちょく会うようになっていった。
時々は、体も重ねた。でも、俺が「ちゃんと、付き合おうか」
と言うと、彼女はなぜか話をはぐらかした。その理由は、
半年と経たずして判明した。彼女は、秋から海外の大学に
行くことになっていたのだ。そうなれば、年に一度も
会えるかどうかわからない。俺達は既に恋人同士と何ら
変わらない関係になっていたのに、明確に「付き合って」
しまうことで、別れが辛くなるのを避けようとしていたのだ。
表面だけでも、「遊びの関係」という建前を持っていたかった
のだろうと思う。

彼女が日本を離れて、もう何年になっただろう。
いまどこでどうしているかわからないが、
もしこれから先の人生で彼女と再会することがあり、
もしそのときに彼女が独り身でいたならば、
俺はきっと彼女にプロポーズするだろう。
そんな日が来ることを、俺はいつまでも信じている。